音と文字

私はとにかく新しいものを試すのが好きです。
例えば弦、新しいものが出たらとりあえず試すといっても過言ではありません。
さすがにフィッティング(ペグやテールピース、顎当てなどのパーツ類の総称)は、そう簡単にホイホイと替えられませんが、興味のあるものはなるべく試したいというスタンスです。

しかしそういうことを試したことがある人なら誰しもが共感してくれるであろう事なのですが、
その比較が非常に難しいと感じます。
まず切り替えが瞬時にはできない点、音を比較するときにこれがボタン一つで切り替えられるならどれだけいい事でしょう。
次に環境(弾いている部屋や状況)によっても全然変わってしまう点、これも非常に厄介です。
また奏者と聴き手でも聞こえ方が違うという点、分身して遠くで音を聴くことが出来たらと毎日思っています。
そしてなんといっても感じ方は人によって違うだけでなく、同じ人ですら次々変わっていくものだという点、これが一番厄介な問題だと思っています。

このような様々な問題があるにも関わらず、こうして記事として音に関する事を書きたいときにはさらに問題があります。それは音を文字に表すのは困難を極めるという点。
音の感じ方が違う上に、音をどう比喩するかも人によって違う、これをさらに対面ではなく文字で…
正直この記事をここまで書いている間に「やっぱり難しいからやめようか」という考えが何度も頭をよぎりましたが、そう言っていては何も書けずに終わってしまう。。。

そこでまずは情報収集をすることにしました。弦メーカーの公式の表現をまず見てみましょう。

これは最近トマスティーク社(Thomastik)から発売されたヴァイオリンの弦、『RONDO Gold』の裏面です。トマスティーク社といえば、チェロ弾きの中ではおそらく「スピロコア(Spirocore)」が一番馴染みがあることでしょう。ほかにも「ドミナント(Dominant)」、最近の弦では「バーサム(Versam)」や「ロンド(Rondo)」などもトマスティーク社の製品です。

いわゆる超大手の弦メーカーさんなので、そこで使われている表現というのは大いに参考になるはず。英語は苦手ですが、チェロ弾きとして多少意訳を挟もうと思います。
まず上から、「brilliant(輝き)」と「warm(温かみ)」。
音の線、「broad(広い)」「focused(集中)」。
操作性、「easy(楽)」「demanding(難しい)」。
慣らしに必要な時間、「short(短い)」「average(並み)」
音色、「pure&clean(清らかで澄んでいる)」「rich&complex(豊かで複合的)」
だいたいこんなものでしょうか。

「輝く音」と「温かい音」という言葉はよく使われるように思います。
次の音の線というパラメーターもたしかに使われているように思います。音が細いだの太い音だの。
そして音色、「pure&clean」の反対が「rich&complex」となっている、これは個人的にとても興味深い。なるほど、あまりそういう表現は使ったことがなかったけれど、確かに納得できます。
とはいっても、はたしてこのグラフをみてどんな音か想像するのは結局とても困難です。
おかしい、私は何をしたくてこんなことをし始めたのだろうか。
もうこの時点で本来書く予定だった文字数を大幅に超えてしまったため、残りはまた次回。
目標はこのサイト内、および私自身で音と言葉にある程度繋がりを見出すことですが、このペースでは死ぬまでに記事が完結しないとみた。

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